着物の着付けで「衣紋を抜く」とは
着物の着付けの際に、「衣紋を抜く」という言葉をよく耳にします。これは、女性が着物を着用する際に衿を後ろに引き下げることを指しています。男性や子供の着物を見ていると男性や子供は衿を詰めてそのまま着用しています。
一方女性だけは衣紋を抜いた状態で着用することで、女性の色気を演出することができます。ずばり女性着物ならではの着方です。
礼装か普段着用かどうか、また好みによって抜き方の程度は様々です。但し衣紋を大きく抜きすぎると舞妓や芸者さんのようなイメージになってしまうので、ほどほどにするのが美しい着姿になります。
実は女性が下げ髪だった江戸時代以前は特に衣紋は抜いていなかったようですが、江戸中期に入り髷を結う髪型が流行したことから、衣紋を抜くことによって襟足を美しく魅せるためと、油が衿につかないようにとあえて衣紋を抜いて着付けるスタイルがスタンダードになりました。
近年の洋服のファッションでも衿を抜く、抜き衿シャツが流行しましたが、まさにその原点となるものと言えるでしょう。
着物の着付けで大切な「すそ線を決める」ことの必要性
着物を愛用されている方の場合、自身では何も意識せずに着付けを終えられていることでしょう。この時、もっとも最初におこなう行動として「すそ線を決める」ことを初心に返って意識して見ると、実は着物を綺麗に着用する鍵は裾にあることがわかります。
この「すそ線を決める」ということは、襟元の返しと帯留めの位置も正すことにもなります。
着物は1枚布で仕上げられているため、身に纏った時に必ず身体の前で右端を上にして折り返さないといけません。この折り返しの基準がすそ線でもあり、少しでも斜めになっていると着付けを終えたあとに全体のバランスも崩れてしまいます。
すそ線を正しく決めるためのコツとしては、真上からみて45度の位置にすそ端がくるようにしましょう。この45度が折り返しの位置に合っており、帯留めをしても位置がずれることもありません。
最初のうちはすそ線を正しく決められないものどすが、慣れてくると感覚だけで無意識に位置を決められるようになります。